開催期間 | 2021年8月20日(金) 21日(土) 22日(日) |
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開催場所 | 新潟県・苗場スキー場 |
ライブレポート | FUJIROCK EXPRESS'21 |
「KEEP ON FUJI ROCKIN’」の想いを掲げ、2年ぶりの開催となった今年。新型コロナウイルス感染防止対策を講じ、マスクを着用し歓声などは禁止、さらに禁酒など多くの制限や制約がある中で、「特別なフジロック」の記念碑的なステージが繰り広げられた。
遂に完全復活したのが、最終日のヘッドライナーを託された電気グルーヴ。二人が揃ってフジロックに登場するのは2016年にGREEN STAGEのクロージングアクトとして出演して以来で、「おかえり!」というオーディエンスの心の声が聞こえてくるような祝福ムードに溢れるなか、2年半ぶりのシングル「Set you Free」からはじまってラストは「富士山」という流れで見事に応えた。対して、1日目と2日目のヘッドライナーは、今や邦楽シーンを背負うバンドであるRADWIMPSとKing Gnuが務めた。2017年に初登場でGREEN STAGEに出演してから4年ぶりのRADWIMPSは、「前前前世」「スパークル」、そして菅田将暉をフィーチャリングに迎えた「うたかた歌」では菅田と共にパフォーマンス。数日前に公開され、この瞬間にこのステージで演奏するために作った曲だとMCで紹介した新曲「SUMMER DAZE」も披露するなど、大きな軌道を描き続けるRADWIMPSの今を示した。一方King Gnuは、2017年、前身バンドの活動を経て「King Gnu」としての活動を開始してから3ヶ月後にROOKIE A GO-GOに出演。翌年にRED MARQUEE、そして今年ヘッドライナーとして登場。幾つもの火柱が並ぶ豪勢なステージで、序盤の「飛行艇」から圧倒すると、「千両役者」「白日」「三文小説」などキラーチューンで魅せていった。アンコールのラストでは、ROOKIE A GO-GOでも最後に演奏した「サマーレインダイバー」を披露し、ヘッドライナーの貫禄を見せつけた。
なお、例年は開催前日に行われる前夜祭を今年は中止とし、プレオープンとしてキャンプサイトとホスピタリティエリアのみ開場し、夜はサプライズの花火を打ち上げた。
1日目
いよいよスタートした初日のGREEN STAGEでトップバッターを務めたのはOKAMOTO’S。バンドとしては10年ぶりということで、貫禄すら感じさせる艶っぽいロックンロールを奏でて、晴天のもとロックの祭典の狼煙をあげた。WHITE STAGEのトップバッターを務めたドレスコーズの志磨遼平も、奇しくも2011年に毛皮のマリーズで出演して以来のフジロックのステージであり、ロックスター然とした色気と包容力を放った。またDYGLが、ワールドワイドなバンドとして活動する現代的なギターロックを届けながら、コロナ禍での開催に対する思いを述べるとともに感染症対策をお願いするなど、生々しく生き様を表していた光景も印象深い。
今回は例年よりステージ数も減らし、飲食エリアなどが拡大されたが、GREEN STAGE、WHITE STAGE、RED MARQUEE、FIELD OF HEAVENの主要4ステージと、Gypsy Avalon、ROOKIE A GO-GO、DAY DREAMING、PYRAMID GARDEN、苗場食堂にて、総勢約140組ものアーティストが出演した。近年のフジロックでは、音楽ジャンルとしての「ロック」に縛られない自由なブッキングも話題にのぼり、FIELD OF HEAVENでは、フジロックらしいラインナップと言える「スピンオフ四人囃子feat.根本 要&西山 毅」のあと、ガラッと雰囲気を変えて手嶌葵が登場。「テルーの唄」「明日への手紙」などを圧倒的な歌声で披露した。現行の日本のヒップホップ・シーンの隆盛を物語ったのは、WHITE STAGEにPUNPEEとともに出演した5lackから、KID FRESINOという流れで、さらにRED MARQUEEにはSUMMIT所属アーティストが集結。カリスマたちのステージにオーディエンスがハンズアップしていたのもハイライトの一つだ。
フジロックの常連くるりは、「HOW TO GO」「花の水鉄砲」「琥珀色の街、上海蟹の朝」「ばらの花」などをストイックにパフォーマンス。幾多のフォロワーバンドを輩出しているロックバンドでありながら、様々な音楽を吸収し続けている道程も垣間見えるステージだった。ちなみに、このくるりのライブでは突然の雨に見舞われ、さっとレインウェアをはおる人々の姿から苗場にいる実感が沸いた人も多かったと思う。初日もすでに終盤に差し掛かる頃、WHITE STAGEに登場したのはMETAFIVE。<FUJI ROCK FESIVAL'21>に向けた特別編成として、砂原良徳とLEO今井に、永井聖一(Gr)、白根賢一(Dr)をサポートメンバーに迎えてレアなライブを披露し、ステージの完成度に拍手が上がった。このあとWHITE STAGEのトリを飾ったmillennium paradeは、WHITE STAGEのピークタイムらしく映像演出にも凝ったステージを作り上げた。全長5メートルに及ぶ鬼のバルーンに映像がプロジェクションマッピングで投影され、『⻯とそばかすの姫』のメインテーマ「U」では映画の主人公Belleに変身、さらに「Fireworks and Flying Sparks」と「FAMILIA」ではKing Gnuの井口が登場して歌唱するなど、次世代コレクティブとしての気概を見せた。また、この日の夜のFIELD OF HEAVENでは、2015年にROOKIE A GO-GO、2017年に苗場食堂、2019年にRED MARQUEEと着実にフジロックでもステップアップしてきたTempalayがサイケポップを響かせたあと、2008年にゆらゆら帝国で出演して以来13年ぶりのフジロックとなった坂本慎太郎が、淡々とした演奏ながら異質なサウンドメイクで異彩を放ち、サイケデリアが極まったような圧巻の流れであった。
2日目
2日目は、サンボマスターが熱演と言うしかないパフォーマンスでフジロック史に新たな1ページを刻んでくれた。「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」では、山口隆(唄とギター)が求めたようにオーディエンス全員がきっと「愛と平和!」を心の中で叫んでいたし、YouTubeでライブ配信を視聴する人たちも叫ばずにいられなかったに違いない。途中から大雨に見舞われるとむしろ熱気はどんどん増していき、最後に演奏した「花束」では、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK FEST.、氣志團万博などのロゴがGREEN STAGEの巨大スクリーンに映し出されるなどし、コロナ禍で大打撃を受け続ける音楽フェスに対する讃歌として受け取った。
このあとGREEN STAGEにはパンクロックのヒーローが立て続けに登場。クロマニヨンズでは、甲本ヒロト(Vo.)が「皆さんの(心の)大きな声が聞こえます」「僕は声を出すことが許されてるから、出すからね」とニコニコと語りかけ、急遽出演がきまったKen Yokoyamaは、新旧交えたセットリストでピンチヒッターを務めあげた。この日の朝イチに聴いた名言も忘れがたい。KEMURIの伊藤ふみお(Vo)が、「右手は握手したまま左手で殴り合えばいいと思う。でも右手は離してはいけない」と涙ながらに訴えかけた言葉は、分断が叫ばれている最中で刺さり過ぎた。
レジェンド級のアーティストを拝めるのもフジロックという大舞台ならでは。今年20年ぶりに再始動したAJICOは、もはや説明不要のUAとベンジーの佇まい、声、ギターに誰もが酔いしれたが、「Black Jenny」(SHERBETS)、「悲しみジョニー」(UA)、「水色」(BLANKEY JET CITY)もパフォーマンスするサービス精神まで見せてくれた。そして、この日のWHITE STAGEのトリを務めたのは、2019年2月に再結成したNUMBER GIRL。「福岡市博多区からやってまいりました、NUMBER GIRLです」というあの挨拶も含めて、「タッチ」から「IGGY POP FAN CLUB」まで(新曲「排水管」も披露)、まばたきすら惜しまれた。ナンバガの直前にはThe Birthdayが出演し、日本のロックシーンの代名詞みたいなロックスターの不敵な雰囲気に包まれて幸せを感じる人は多かっただろう。
他にもまだまだ、envyは全身全霊のハードコアが神々しいほどで、夜のFIELD OF HEAVENをレイブ空間にしたDachamboからのROVOという人力ダンスミュージックの猛者は、オーディエンスを黙々と踊らせて久々の心の解放に導いた。さらに、Pyramid Gardenでの野田洋次郎(RADWIMPS)、Day DreamingでのLDH JAPAN 所属のクリエイティブ・ユニットPKCZ®、Gypsy Avalonでのムジカ・ピッコリーノの出演も贅沢だった。
3日目
メジャーなアーティストとオルタナティブなアーティストが共にラインナップされた最終日。例年より1ヶ月遅い開催タイミングの場内に飛び交っていたトンボがマイクに止まった、などという和やかなMCから一転して歌はブルージーで力強い秦基博は、「鱗 (うろこ)」や「ひまわりの約束」を披露。続いてGREEN STAGEにはスカイブルーの衣装のMISIAが登場し、「君が代」で幕を開けると、今年リリースされた「Welcome One」から代表曲「陽の当たる場所」と、国民的シンガーとしての振れ幅を発揮し会場を掌握した。
一方、夕刻の時間帯に登場した日本が誇るレベルミュージックが、THA BLUE HERBとGEZAN。混乱の世の中に向けたステートメントとしてのステージに対して、オーディエンスの眼差しも鋭く、メッセージを確信するようにビートに乗る人々の姿があった。アーティスティックなパフォーマンスで魅せてくれたFINALBY( )は、ステージの主軸が工事現場などにある“コーン”。「デバイスオブジェクト主体の新しいオーディオヴィジュアル体験を創出する」という事前情報の斜め上をいく未知のパフォーマンスは、さすがEY∃と言うべき鮮烈なアート体験だった。そして、WHITE STAGEを締めくくった平沢進+会人(EJIN)は、攻めたセットリストでファンも初見であろう人も熱狂させた。さらにこの日は、GREEN STAGEに登場したAwesome City Clubをはじめ、STUTS、秋山黄色、TENDRE、君島大空、羊文学といった新世代のアーティストたちも多く登場し頭角を現していた。
今年もフジロックの主役の一人だったのが忌野清志郎だ。特別プログラム「忌野清志郎 Rock’n’Roll FOREVER」では、フジロックおなじみのバンド、ROUTE 17 Rock”n”Roll ORCHESTRAが仲井戸”CHABO”麗市をフューチャリングし、ゲストのUA、エセタイマーズ、奥田民生、GLIM SPANKY、甲本ヒロト、チバユウスケ、Char、トーキョー・タナカ/ジャンケン・ジョニー、トータス松本、YONCEという面々が清志郎の名曲を歌った。デビュー50周年の2020年に披露されるはずだったこの贅沢なステージに、あの人だったら、この未曾有の事態に何を思い、何を語りかけてくれるのだろうと思いを馳せずにいられない人も多かったのではないか。
そして電気グルーヴがGREEN STAGEからステージを去ったあと、RED MARQUEEで最後のアクトを砂原良徳が担うというドラマティックな幕切れを迎えた。
(Text by RYOKO SAKAI)
GREEN STAGE | ||
OKAMOTO'S | KEMURI | Awesome City Club |
yonige | SIRUP | cero |
くるり | サンボマスター | 秦 基博 |
SiM | ザ・クロマニヨンズ | MISIA |
MAN WITH A MISSION | Ken Yokoyama | 忌野清志郎 Rock'n'Roll FOREVER with ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA feat. 仲井戸"CHABO"麗市 GUEST:UA、エセタイマーズ、奥田民生、GLIM SPANKY、甲本ヒロト、チバユウスケ、Char、トーキョー・タナカ/ジャンケン・ジョニー、トータス松本、YONCE |
RADWIMPS | King Gnu | 電気グルーヴ |
WHITE STAGE | ||
ドレスコーズ | tricot | 秋山黄色 |
DYGL | カネコアヤノ | yonawo |
5lack | AJICO | TENDRE |
KID FRESINO(BAND SET) | envy | 折坂悠太(重奏)(canceled) |
METAFIVE (砂原良徳×LEO今井) |
MONOEYES | THA BLUE HERB |
millennium parade | The Birthday | FINALBY( ) EY∃(BOREDOMS) x COSMIC LAB x TAIKI NIIMI x KANTA HORIO x MASUKO SHINJI |
NUMBER GIRL | 平沢進+会人(EJIN) |
RED MARQUEE | ||
KOTORI (selected by ROOKIE A GO-GO ’19) | Mega Shinnosuke | 君島大空 合奏形態 |
TENDOUJI | DENIMS | STUTS (Band set : 仰木亮彦, 岩見継吾, 吉良創太, TAIHEI) |
H ZETTRIO | ReN | MONO NO AWARE |
THE BAWDIES | milet | 羊文学 |
Yogee New Waves | サニーデイ・サービス | GEZAN |
SUMMIT (PUNPEE, GAPPER, OMSB, MARIA, SIMI LAB, DyyPRIDE, BIM, VaVa, in-d, C.O.S.A. × KID FRESINO, BLYY, TWINKLE+) |
indigo la End(canceled) | CHAI |
PLANET GROOVE | TRIBAL CIRCUS | SUNDAY SESSION |
Vaundy | THE SPELLBOUND | 砂原良徳 |
Kan Sano | THE ALEXX | 4s4ki |
FIELD OF HEAVEN | ||
前野健太 | 草田一駿 五重奏体系 (selected by ROOKIE A GO-GO ’20) | GLIM SPANKY (Acoustic ver.) |
スピンオフ四人囃子feat.根本 要&西山 毅 | 光風&GREEN MASSIVE | 青葉市子 |
手嶌葵 | THE SKA FLAMES plus Special Guest 元ちとせ | BEGIN |
LITTLE CREATURES | Char | SUPER JAM |
Tempalay | Dachambo | 上原ひろみ ザ・ピアノ・クインテット |
坂本慎太郎 | ROVO | OAU |
Gypsy Avalon | ||
"The Timeless Nation" 小沼ようすけ+沼澤尚 Mix by Kamiyann |
ムジカ・ピッコリーノ アルカ号の仲間たち | アトミック・カフェ トーク 【津田大介・斎藤幸平(経済思想家)】(canceled) |
アトミック・カフェ トーク 【村本大輔(ウーマンラッシュアワー)】 |
アトミック・カフェ トーク 【津田大介・小泉今日子・上田ケンジ】(canceled) |
アトミック・カフェ エセタイマーズ |
アトミック・カフェ 片平里菜 |
アトミック・カフェ 黒猫同盟(上田ケンジとコイズミキョウコ)+ゲスト 渡辺シュンスケ(ピアノ)(canceled) |
ケロポンズ with こどもロッカーズ |
高野寛 × 原田郁子 | Alina Saito & 君島大空 | 大友良英 GEKIBAN(canceled) |
猪苗代湖ズ | metamorphose project(EIKO+ERIKO|EYRIE) | Ukulele Adventures 近藤利樹と名渡山遼 |
PYRAMID GARDEN | ||
ヨガワークショップ / 渋木さやか | ヨガワークショップ / 渋木さやか | ヨガワークショップ / 渋木さやか |
Rickie-G | 角舘健悟(Yogee New Waves) | 曽我部恵一 |
藤原さくら | 加藤登紀子 | LEARNERS |
クロワッサンサーカス | クロワッサンサーカス | クロワッサンサーカス |
DJ/Quietstorm Kaoru Inoue Chida | DJ/ZAMIANG | DJ/松田”CHABE”岳二 |
AO YOUNG & Friends | 野田 洋次郎(RADWIMPS) | DJ/KOTARO |
LOVE FOR NIPPON (Hanah Spring/青谷明日香) | 下津光史(踊ってばかりの国) | GOMA meets U-zhaan |
Julia Shortreed |
苗場食堂 | ||
SOUTH PENGUIN | 苗場音楽突撃隊 | 碧海祐人 |
NONE THE WiSER | AAAMYYY | LITTLE BLACK DRESS |
EKD & Los Changaras | uminecosounds | 奇妙礼太郎 |
ROOKIE A GO GO | ||
TAMIW | SEAPOOL | ELL |
Sound's Deli | Acidclank | STAP Sigh Boys |
Haiki | MELT4 | Ms.Machine |
Day Dreaming | ||
TARZAN | DJ MAAR (DOGsPISTOLS) feat. MariNa | ERIMIYA |
ASANO TADANOBU - live | YOSA & TAAR | YOU THE ROCK★ & DJ DA-15 - live |
DJ TASAKA | MYSS | Dj Quietstorm |
スケボーキング - live | PKCZ® | 鎮座DOPENESS - live(canceled) |
DJ Yogurt | DJ KENTARO | BRYAN BURTON-LEWIS |